
警察庁が2026年9月10日、「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を公表しました。
報道では「ランサムウェアの被害が過去最多」という件数が取り上げられています。それは事実ですが、中小企業にとって本当に見るべき数字は別のところにあります。公表された統計データを実際に開いて確認したうえで、そこを整理します。
01被害報告は123件。半期として最多
ランサムウェアの被害報告件数は123件でした。統計が始まった令和2年下半期以降、半期での最多です。
推移を並べるとこうなります。
- 令和6年上半期 114件 / 下半期 108件
- 令和7年上半期 116件 / 下半期 110件
- 令和8年上半期 123件
急増したわけではありません。100件台で高止まりしたまま、過去最多を更新したというのが正確なところです。一時的な波ではなく、この水準が続いているとみるべきだと思います。
02被害の6割超が中小企業
ここが本題です。123件の内訳は次のとおりでした。
- 中小企業 79件
- 大企業 31件
- 団体等 13件
中小企業が64%を占めています。ニュースになるのは大企業や公的機関の事案ですが、実際に報告されている被害の多数派は中小企業です。
「うちのような小さい会社は狙われない」は、統計と合いません。攻撃側は規模で選んでいるのではなく、入れるところから入っています。
03業種は製造業が突出
業種別の上位はこうなっています。
- 製造業 37件
- 卸売業・小売業 15件
- 情報通信業 9件 / 不動産業・物品賃貸業 9件 / 医療・福祉 9件
- 建設業 8件 / 教育・学習支援業 7件
製造業が全体の3割を占めています。取引先とのデータのやり取りが多く、止まると納期に直結する業種です。茨城県南のお客様にも該当する会社が多い領域だと思います。
04復旧に1,000万円以上かかった例が21件
復旧費用の内訳も公表されています。
- 1億円以上 4件
- 5,000万円以上1億円未満 6件
- 1,000万円以上5,000万円未満 11件
- 500万円以上1,000万円未満 3件
- 100万円以上500万円未満 5件
- 100万円未満 6件
回答があったなかで、1,000万円以上かかった例が21件あります。これは復旧にかかった費用であって、止まっていた間の売上や、取引先への対応にかかった手間は含まれていません。
対策にかける費用と比べたときに、どちらが高くつくのかという話だと考えています。
05ネットバンキングの不正送金は、法人が8割超
もう1つ、経理担当のいる会社に関わる数字があります。インターネットバンキングの不正送金被害額は、上半期で約20億6,600万円でした。
- 法人 約17億4,300万円
- 個人 約3億2,300万円
前年同期の約42億2,400万円からは半減しています。ただし内訳を見ると、減ったのは個人で、被害額の84%が法人口座です。
フィッシングの報告件数自体は、前年同期の約119万件から約73万件へ減っています。件数は減っているのに、法人の被害額が残っている。数を撒く攻撃から、狙って取る攻撃へ移っているように見えます。
06いま見直しておきたい3つ
特別なことではありません。被害に遭った会社ができていなかったのも、たいていこの3つです。
- 不審なメールやURLをすぐ開かない。特に請求書・送金に関わるメールは、送信元を見て、電話で確認する習慣を作る
- 多要素認証を設定する。ネットバンキング、クラウド会計、メール、業務システム。パスワードだけで入れる状態を残さない
- バックアップとソフトウェアの更新を徹底する。ランサムウェアはバックアップごと暗号化しにきます。ネットワークから切り離した場所にも1つ置くこと。そして、戻せるかを一度試しておくこと
3つ目が特に大事です。バックアップを取っていることと、戻せることは別です。実際に戻す作業を一度もやったことがない状態は、バックアップが無いのとあまり変わりません。
07最初の一歩
全部を一度にやる必要はありません。まず「パスワードだけで入れてしまう重要なシステムがどれか」を書き出すところからで十分です。そこが分かれば、次にやることは決まります。
何から手を付ければよいか分からない、という段階でのご相談で構いません。ご相談は無料です。LINEからでもお気軽にどうぞ。
出典:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月10日公表)および同統計データ。本記事の件数・金額は、いずれも同資料に基づいています。
